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「あ、あのさトータ……くん。今からって、空いてる?」
翌々日、放課後。
図書委員としての役目もひとまず終わり、また予定の無い毎日が始まった。そんな訳で、早速オレは遠藤から頼まれたことを実行しようと思っている。
「えっ、あ、空いてる!めちゃくちゃ空いてる!!」
「そしたら春ちゃんと……あと、もう一人の4人で遊ばない?」
ああ、トータが目に見えて落ち込んだ。コイツ、オレと二人きりを期待してたんだろうなぁ。
悪いけど、そうは行かないんだ。
「ところで、もう一人って?」
「遠藤くんなんだけど、ほら、トータ……くんの後ろの席の」
「…………ああ、同じ委員会なんだっけ?」
おおい、コイツ分かりやすいな。他の男子の名前出したら急に不機嫌になりやがったぞ。
ホント、恋するトータくんって今までのトータの常識を覆されるって言うか……長い付き合いなのに、知らない面ばっかだ。
「大丈夫だよ、相澤くん!遠藤くんはね、相澤くんと仲良くなりたいみたいだよ!」
「う、うん……」
しかし、ここは同じくコミュ強の皆川を先に説得していたおかげで、難なく乗り越えられるだろう。
オレ達と同じ、好きな人に対して上手く会話が出来ない系の遠藤も予め皆川と話し、あくまで友情の範囲内でトータに憧れていて友達になりたいってことを伝えてあるから、全面的に味方になってくれている。
「遠藤くんって、同じ中学だったよね?確か二年のときクラス一緒で……」
「そ、そうだよ!わ……ぼ、僕のこと覚えててくれたんだ……!」
「あんまり話すことなかったもんね」
遠藤の気持ちを知っているせいか、彼女の感情もダダ漏れで分かりやすい。あれ、もしかして元の世界ではオレも、皆川に対してこんな分かりやすかったのかな?
まぁでも多分、皆川は気付いてないと思う。こっちの皆川を見てると、自分の恋愛事には鈍そうだから。そう思いたい。思わせてくれバレてたら恥ずかしいから!!
「へぇ、やっぱり遠藤くんって読書の幅が広いね。今まで、あのシリーズ読んでる人会ったことなかったのに」
「面白いのに、知名度が低いの……だよね。わ、っと、僕も初めて会ったわ……だよ」
目的地への移動途中も、トータと遠藤の会話は思ったより順調だ。好きなことの話だからか遠藤も饒舌で、だからこそつい女言葉が出そうになって、何度も訂正してるのが何とも。
そう言えば、オレって何も考えずにずっといつもの口調で話していたけれど、トータはともかくとして皆川も口出しして来ないってことは……女の高瀬夏希も元々こうなんだろうか。
「ねぇ春ちゃん……いや、何でもないよ……」
「ん、何々?相澤くんと遠藤くんが仲良さそうなのに妬けちゃう感じかな?もーぅなっちゃんったら!!」
怖いくらい良い笑顔の皆川に話し掛けるのを躊躇ってしまったが、時既に遅し。
恋バナ大好きお節介モードになった彼女のマシンガントークが、前を歩く二人に聞こえないよう塞き止めるので精一杯だった。
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