当日

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 その後は、無性にイライラして仕方なかった。飯の時間も風呂の時間も行動が乱暴になり、兄を兄と思っていない一つ下の妹の里夏(りか)がいつものように『うるさい、バカナツキ』と言ってくるのも無視。それによって向こうの怒りもヒートアップするのだが、構っている余裕はこっちも無し。  何もする気が起きず、小学生並みに早い時間に寝てしまった影響か今日は恐ろしい程すっきりと目が覚めてしまった。あんなにモヤモヤとしていた気持ちも落ち着いてるし、単純だなオレ。あ、でも宿題やってねぇ。まぁトータに写させてもらえばいっか。  ベッドから起き上がり、床に立つと何だか普段とちょっと景色が違う気がした。何つーか、あの本棚あんな高かったっけ?とか、見覚えのないぬいぐるみが置いてあるとか、カーテンの色変わってね?とか。基本はオレの部屋なのに、所々おかしなところがある。  極めつけは、今まで置いたことも無かった姿見の大きな鏡が何故かあることだ。そしてそこに映っているのは、オレに似ているけどオレよりも髪が長くて、腰のちょっと上辺りまである姿。つか、アレ女子じゃん。何であんなオレに似てんだろ。そもそも、鏡じゃねーのかよこれ。何なのか調べようとオレが近付くと、画面の向こうの女子も近付いて来る。何だよこれ!映像なのか!?  もしかしたら、あっちからもこっちの映像が見えてるんじゃ……と思って慌てて鏡っぽいものから見えないだろう場所に移動する。しかし、何なんだ一体。いつの間にこんなもの仕掛けられたんだ。昨日の夜は無かった気がするから、オレが寝てる間か?もしや、今日がオレの誕生日だからってドッキリのつもりなのか?  となると、発案者は里夏だろう。アイツは兄をおちょくるのが大好きだ。てことは、あの映像の女子もアイツか。オレ達そんな似てる兄妹じゃないと思ってたけど、やっぱ同じ血筋なんだな。そうだ、今頃心の中で大爆笑してるだろう里夏にバレてるって教えてやろう。  オレがもう一度鏡らしきものの前に来ると、相変わらずこっちの動きを真似てるそっくりさんが居て笑いそうになるが、堪えて大声で告げてやる。 「バァーカ、お前の魂胆なんて見え見えなんだよ!いい加減オレの真似すんの止めろよ気持ちわりぃ!!」
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