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するとあのヤロー、オレの台詞そのまま同じタイミングで返して来やがる。バレてるって言ったのに、まだ続けるつもりかアホめ。
「だから、止めろつってんだろが!!」
「うっさいんだよバカナツキ!朝から頭イカレやがったのか!!」
「えっ!?」
バン!と激しい音と共に自室のドアが開いて、いつも通りの里夏が姿を現した。オレにちっとも似ていない、いつも通りの妹が。
え、じゃあこれ誰だよ……?と思いながら鏡のようなものに視線を戻すと、相も変わらずオレに似た女子が目を丸くしている。
「鏡に話し掛けてるとか、本気で頭イカレてんの?」
「いや、だってこれ映ってるのオレじゃねーし!何かオレに似てる知らねー女が……!!」
「は?」
渋々、と言った様子で里夏が部屋に入って来て鏡に似せた何かを覗き込む。そしてわざとらしく盛大に溜息を吐き捨てて、ゴミを見るような目でこっちを見た。
「別に、いつもと変わらない……化粧っ気のない残念不細工で可哀想なバカ姉貴様しか映ってないけど?」
「あ、姉貴!?何言ってんだよ、オレは兄貴だろ!?」
「はぁ?彼氏出来なさ過ぎて、ついに自分を男だと思うようにでもなった訳?キッモ」
妹の辛辣さに変化は無いのに、根本的な部分がおかしい。オレが姉?女?そんなバカな話ある訳がない。この鏡だって、何か仕掛けがある筈だ。オレの声が心なしかいつもより高めに聞こえるのだって、気のせいだろう。
その証拠に、オレの髪の長さは短いまま……じゃない、触ってみたら何か長い。よく見たら、着ている物も鏡の向こうの女と同じ、可愛らしいパジャマ。そして極めつけは、目線を下に降ろしたときに気付いた。オレの胸、膨らんでる。
「ぎっ……ぎゃああああっっ!!!!」
「いきなり大声出すんじゃねーよバカナツキが!死ねっ!!」
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