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慌ててリビングに向かい、コーヒー飲みながら新聞読んでる親父や朝食の準備をしてるお袋に『オレ女になってる!!』と訴えても、『何言ってるの、夏希は生まれたときから女じゃないの』とか『そうだぞ、父さん出来れば一人くらいは男の子が欲しかったんだからな』とか返って来て、妹と全く同じ状態。
とりあえず腹減ったから飯を食ってると、さっきのオレとのやり取りのせいだろう、普段の二割増しで不機嫌な里夏がやって来る。その服装が制服に変わってるのを見て、オレは思い出してしまった。
今日、平日だ。学校あんじゃん。この調子だと、トータも同じ反応なんだろうなぁ……嫌だな、行きたくない。なのでそれとなく頭が痛いフリをしてみるものの、母親に早々に見抜かれた。
「学校サボったら、誕生日のごちそうもケーキも無しだからね」
そう言われては仕方ない。
食い終えて部屋に戻り、目をつぶって何とか女子の制服に着替えた。当たり前だ、オレは自分の体が女になったからってうひょー触り放題見放題!なんて浮かれる変態じゃねぇ。万が一皆川と結ばれ、キス以上の展開に進んだときに初めて拝むものだ。とは言え、風呂とかどうしよ……。
そんなことを考えながら歩いていたせいだ、まぁ結局教室で会うからちょっとの差でしかねーけど、この姿をトータに見られたくないってのにいつもの待ち合わせ場所まで無意識に来てしまっていた。しかしそこにトータは居ない、その代わりに。
「あ、おはようなっちゃん!」
何故か、皆川が居た。
「へ!?あっ……みっ、皆川!!さん……!?」
「もう、どうしたのなっちゃん?そんなにかしこまって……いつもみたいに『春ちゃん』って呼んでよ」
「はっ…………春ちゃん!?」
おかしい、距離感がおかしい。何これ夢?ああそうか夢か!だよなぁ、朝起きたら女って時点で変だったんだ。皆川と登校出来るなんて最高だけど、何かもう色々と疲れたから、いい加減目を覚まそう。オレは、手に持っていた鞄を自分の顔に思いっきり叩き付けた。
「いってええぇぇっっ!!!!」
「ど、どうしたのなっちゃん!?」
首が外れそうな勢いで痛みを与えたってのに、一向に現実に戻る気配がない。そもそも、夢って痛覚無いんじゃなかったっけ?恐らく腫れ上がっているだろう頬が痛む。
こんな……どう見ても頭おかしくなったとしか思えない行動を取るオレをオロオロと心配してる皆川、やはり天使か。
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