当日

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「あっ、そっか!ごめんねなっちゃん、私、なっちゃんに大事なこと伝えてなかった!それで、ちょっと怒っちゃったんだね!」  何かそう聞くと、思い通りにならなくて癇癪起こしてる小さい子どもみたいじゃね?と言うか、今のをそう捉えられる皆川って……天使つーか、ちょっと抜けてるつーか、鈍い?  でもそんな考えなんて、次に言われた一言で見事吹き飛んだ。 「誕生日おめでとう、なっちゃん!」  好きな子からの誕生日のお祝いは、どうしてここまで幸せになれるんだろうか。昨日に引き続き皆川から貰った言葉に、涙が出そうになった。 「あっ、あ……ありがとう!!」 「プレゼントは放課後ね!壊れちゃうといけないから、家に置いて来たの」  何かもう……自分が女な理由とか、何故トータじゃなくてここに皆川が居るのかとか、全部どうでもよくなった。多分夢なんだから何でもありだし、今が良けりゃあ全て良し!単純で結構!!  と言う訳で、ニヤニヤしそうになる口元を意識して引き締めながら大分見慣れて来た通学路を歩いていると、当然オレ達の通う高校に辿り着いた。一応クラスや下駄箱の位置が変わってないのを確認し、自分の教室へと向かう。  その間も、皆川は近くに居る。すれ違いざまに色んな奴に挨拶をして、そして返されている。友達が多いんだなーと、オレは思った。  そんなところは、トータに似ている。友達の友達は友達じゃない……がオレの持論なので詳しくは知らないけど、中学のときなんか昼休みと部活の時間以外は、いつもどっか居なくなってたし。  共通の友達も居たけど、アイツのが圧倒的に数が多かったから正直言うと把握しきれていないってのが本音だ。  しかし、何でオレがこんな皆川と親しい感じになってんのかは分かんねーけど、そこは夢だから都合良く出来てんだろきっと。  そう思っていたのに、オレはその後すぐにとんでもない事実を突き付けられることになる。 「あっ、おはよう相澤くん!」  教室のドアを開くと、奴が居た。いつもみたいにニコニコ愛想振りまいて……って言うと、何か悪いように聞こえるな。誰とでも気さくに話が出来る、化け物コミュ力を発揮する。  オレは皆川から離れて、トータの前へと移動。 「おい、てめー何で先に学校来てんだよ?つか何で皆川があの場所に居る訳?そう言うことするならするで、ちゃんと連絡しろよな!?サプライズ、とか言うのかもだけど流石に心臓に悪いわ!!」 「えっ…………と、な、何のこと……?た、高瀬さん」 「何だよ『高瀬さん』って!!いきなしそんな他人行儀……て、あれ……?」
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