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マスターはいつものごとく書類に埋もれ、俺が着いたことには気づいていない。
右手が凄い速さで動いているが、何も身体強化を二重にしなくても……
まぁ机が書類で山積みになるっていう、漫画とかでしかないような状態だから仕方ないか?
これ実際に見ると崩したくなるから不思議
マスターに向けていた視線を前に戻す。
机から自分で出したコーヒーカップを持ち上げ、ゆっくりと口に含んだ。
やっぱブルマンうまいわぁ。
城からパクッた甲斐がある。
うん。
美味しくブルマンを飲んでいる間、正面からの視線がなくなりませぬ。
上目使いでチラッと正面を見てみた。
おぉふ……
ばっちりリアンと目があいますた。
まっまぁマスターはまだ気づいてないようだが、あの速さならもう少しで終わるだろう。
ならばそれまでゆっくりこれを飲んでいればいい。
長い沈黙は、俺には五分にも十分にも感じられた。
実際は一分程度だったが。
「すまないな。やっと書類は終わった。人も揃っているようだし、早速行ってくれ」
「分かった。資料くれ」
俺はやっと重い沈黙の空間から抜け出せると、普段よりも素早く立ち上がりマスターの前まで移動した。
「ん」
マスターの右手には、恐らく十枚ほどのホチキスで纏められた資料。
それを無言で受け取り、リアンに振り返った。
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