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入学式当日。
真新しい制服に身をつつみ、覚えたての通学路を歩く。
…いや、違った。走っていた。
私はセーラー服の着方がいまいちわからず手間取ってしまい、遅刻寸前だった。
入学式前の、あのえもいわれぬ緊張感など、味わっている暇もなかったのだ。
さっきセットしたばかりのお下げが不安な揺れ方をする。
(ああ、これは学校についてから結い直さなきゃいけないな。)
と思いながら 、ただひたすら通学路を走る。
慌てて受付を済まし、“1‐2”と書かれた教室を目指す。
クラス表を見る限りは、同じ小学校の子が何人か居るようだ。
(私は若生 爽歌だから、46番か)
一番後ろの席、か…。
出席番号を暗唱しながら、窓際のその席に座る。
窓の向こうに、散りかかった桜の木が見える。
私も、こんなふうに散りたい。今すぐ、この見知らぬ人の中から抜け出したいものだ。
仮担任が「式は長いですから、お手洗いに行っておきなさい」とどっかでよく聞く台詞を言う。
さあ、乱れたお下げを結い直すため、お手洗いに向かおうか。
その時。
私は何かに躓いた。
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