中学1年 ‐April‐

2/4
前へ
/20ページ
次へ
入学式当日。 真新しい制服に身をつつみ、覚えたての通学路を歩く。 …いや、違った。走っていた。 私はセーラー服の着方がいまいちわからず手間取ってしまい、遅刻寸前だった。 入学式前の、あのえもいわれぬ緊張感など、味わっている暇もなかったのだ。 さっきセットしたばかりのお下げが不安な揺れ方をする。 (ああ、これは学校についてから結い直さなきゃいけないな。) と思いながら 、ただひたすら通学路を走る。 慌てて受付を済まし、“1‐2”と書かれた教室を目指す。 クラス表を見る限りは、同じ小学校の子が何人か居るようだ。 (私は若生 爽歌(わこう さやか)だから、46番か) 一番後ろの席、か…。 出席番号を暗唱しながら、窓際のその席に座る。 窓の向こうに、散りかかった桜の木が見える。 私も、こんなふうに散りたい。今すぐ、この見知らぬ人の中から抜け出したいものだ。 仮担任が「式は長いですから、お手洗いに行っておきなさい」とどっかでよく聞く台詞を言う。 さあ、乱れたお下げを結い直すため、お手洗いに向かおうか。 その時。 私は何かに躓いた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加