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――頭痛がする。
曇天の空の下、かなえは雨の気配を感じていた。家までもってくれと願えば、途端に降り出す雨。今日もまた、例外ではなかった。
アスファルトに広がるのと同じように、制服に染みができる。ぽつり。ぽつり。最初はまばらに、しかしそれはすぐに全体を呑み尽くして、かなえはすっかり水浸しになってしまう。
出し抜けに、凛とした声が耳を打った。
「傘を差し上げよう、かなえ」
声を掛けてきたのは、クラスメートの早苗さんだった。同じ制服を着ているのに大人びた雰囲気を持つこの少女を、かなえは呼び捨てには出来なかった。クラスが一緒になり、友人になっても、彼女はどこか異質で、遠い存在に思えたからだ。それはその容貌のせいか、それとも常人離れしたその感性か。それはかなえ自身にもわからなかった。
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