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Ⅰ
世間には本当に自分勝手な奴が多すぎる。
いいえ。
勘違いをしている奴と、言い換えた方がいいのかもしれない。
真夏の炎天下。うだるような暑さの中、混雑する人波。
前方に二十人はいるだろう大幅に遅れているバス待ちの人々。後ろから数えた方が早い位置に並んだ私達。
「はぁ……」
自分でも知らずについたため息が耳に聞こえた。
ああいうのは、本当に気分が悪い。
今、私の目の前で。
ようやく辿り着きそうなバスのクラクションを聞いて。
前から数えた方が早い場所へと列に割り込んできた馬鹿がいる。
さっきまでヒサシのついた日陰の青いベンチに悠々と腰をかけ、缶ジュースを口にしていたはず。
普通なら最後尾に並ぶか次のバスを待つはずなのに、偉そうに動き出した身体のデカい男。
バス停とベンチを区切るように幾つか並んだ膝まである石柱の間を通って、今まさに女学生とメガネのお兄さんの間へと。
割り込まれた二人はここからでも困惑しているのが分かる。
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