1話 冷たい瞳の少年

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 ──夕方5時。  読みたかった本を読み終え、葵は帰り支度をしていた。 図書室には先生がいないので最後に使用した人が鍵を掛け職員室に鍵を返さなくてはいけない。 まあ、今日1日葵以外が図書室に来ることはなかったので必然的に葵が鍵を掛けることになるのだが。 「……これでよし」  施錠の確認をして葵は図書室に鍵を掛けた。 夕日に照らされた廊下を歩く足音だけが響く。 ────── ───── ──── ─── ── ─ 「……失礼します」  職員室のドアを軽くノックして入る葵。 休みの日とあってか職員室には女性の先生2人と警備係1人しかいない。 「今日も1日図書室に居たの葵ちゃん?」  高校に入学してからほぼ毎日のように図書室を利用している葵は鍵を返しに職員室は来ることが多い葵は先生達から覚えられていた。 「……はい」 「そうだ葵ちゃん、コーヒー飲む?」  先生がコーヒーを準備をしようと立ち上がる。 「し、失礼します」  葵はペコリと頭を下げ、足早に職員室から出る。 「あ、葵ちゃん!?」  後ろから先生の声が聞こえたが葵はそのまま靴箱に向け走った。 只でさえ職員室に行くのだって嫌なのに先生達が居る職員室でコーヒーを飲むなんて葵からしてみればあり得ないことだ。 「……はぁ」  葵は靴箱に着いたと同時にため息をつく。 (また……私は……)  葵からしてみればこんな事はしょっちゅうあることだ。 クラスメイトや先生が話しかけてきてくれてもその場から逃げてしまう。 逃げた後は自己嫌悪。 その繰り返しである。  そして今───。 葵はまた自己嫌悪をしながら靴を履き、夕日が落ち始め暗くなってきた外に出た。
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