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風が周りの木々を揺らし、音をたてる。
5月に入ったが夕方頃は風がとても冷たく葵は身を震わせる。
(寒い……)
校門まであと数十メートルに差し掛かった時、葵は校門の前に立っている黒のロングコートに黒ハットを深々と被っている人物が目に止まった。
顔が見えないので男か女かはわからないが伸長は高め。
その人物は何故か『葵を見ている』ように見えた。
(誰だろう?怖いな………)
葵がそんなことを思った時、その人物が校門の中に入ってきた。
(えっ………!)
その人物は校門の中に入ると同時に───葵がいる方に向かい走ってきた。
この時葵は人生で初めて『自分の命が危ない』と悟った。
ただ道を訊きたいだけなのかもしれない。
だけど───この時ばかりはそういうのではないんだとわかった。
葵はその人物に背を向け──全力で走り始めた。
行き先はただ1つ───。
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