百年の鎖

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リズリー・オッシュ。彼は少女の直属の上司であり、兄代わりとも言える存在だった。若輩者ながら軍上層部に身を置き、師団長も任されている実力者でもある。 柔らかな物腰と、暖かな雰囲気を持つ事から軍人と見られない事が多々あった。 本人はそれを気にしているのかいないのか、聖職者として潜入するのもありですねと笑えない冗談を溢していた。 「お恥ずかしい所を見られてしまいました……。こんな状態では、世話役として失格ですね」 そう言って頭を下げたまま項垂れる少女に、リズリーは大丈夫だと声を掛ける。 「彼には手を焼いてしまうのは我々とて同じです。私も何度逃げられ、苦汁を飲んだ事か。貴方が気にする事ではありませんよ。それと、クリエス」 「はい?」 名を呼ばれ顔を上げると、額に鋭い痛みが走る。叩かれたのだと自覚し、額を撫でる頃にはリズリーの顔が至近距離にあった。 「リズリー、様」 「今は二人きりです。そのような堅苦しい言い方は止めて下さい」 「で、でも! もう私も軍に属している身ですし、上下関係は重んじなければ――!」 「おや、兄の言う事は聞けませんか?」 にこり、と自分に向けられた綺麗な笑顔にクリエスの口は動きを止める。笑っている筈なのに、その瞳は強い怒りが宿っているように見えた。
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