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素直に謝らなければ自分の身が危ういと察知したクリエスは、思いきり首を横に振ると砕けた口調に戻す。
「聞くわ。ちゃんと聞くから、その目止めて!」
「ふふ、宜しい」
リズリーは満足したのか、クリエスの頭を優しく撫でてていく。その表情に先程の黒さは全く見えない。見間違いだったのではないかと記憶を疑いたくなる程に、リズリーは穏やかに笑っていた。
柔らかな金の髪を梳くように撫でるリズリーを横目に、クリエスはある事思い出す。それは去り際のウィリアムとの会話。
「……そうだ。ねぇ、リズ兄様。ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「ん? 何ですか」
「何故、ウィリアムはこの塔に幽閉されているの?」
リズリーの細められていた目が僅かに動く。それを見逃す筈もなく、クリエスはリズリーに詰め寄った。
「何か、理由があるんでしょう? 大罪を犯した能力者ってだけで、こんな町外れに野放し状態なんておかしいもの。大抵の能力者は、死刑に処されているのに」
世話役になった時からずっとクリエスが抱いていた疑問。確かに幽閉されてはいるが、ある程度の自由は利くし軍の高官がやたら面会に訪れるのだ。罪人の扱いとしては何処かおかしい。
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