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――大陸歴3960年。
時代は今、大きく移り変わろうとしていた。
ロディカ=ランスウェル帝国。帝都ユグランにある、高台にある歴史ある塔。空に突き抜けるようにそびえ立つその塔に、百年前大罪を犯したと言われる能力者(ヴァリュアブル)が幽閉されていた。
幽閉されていると言っても、鎖で塗り固めるように地下牢へ閉じ込めている訳ではない。一族との接触、外出を禁じられているだけで塔の内部ならある程度の自由は効く。
ジャラリ、と両手足から垂れ下がる鎖を鳴らしながらその能力者は塔内を闊歩していた。
「大罪人、ウィリアムっ! 止まりなさい!!」
突如、塔内に響いた甲高い声。ウィリアムと呼ばれた能力者の足は止まり、振り返り声の主を確認する。其処には金髪碧眼の、軍服を着た少女が仁王立ちで廊下に立っていた。
「話があるわ。至急、部屋に戻りなさい――って、何無視して進んでるの!」
ウィリアムは少女の姿を確認するなり、何事もなかったように歩き始める。歩く度に足枷から伸びた鎖が音を鳴らす。
少女は顔を一気に顰めると、早足でウィリアムに近付き更に声を上げた。
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