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「止まりさいって言ってるのに! 何、無視して進んでるのよっ!」
行く手を遮るように横に並んだ少女に舌打ちすると、ウィリアムは再び足を止めた。
「うるせぇよ、ブス」
一呼吸分の間の後、それが自分に向けられた言葉だと気付き少女は、ウィリアムを鋭く睨み付ける。
「だ、誰がブスよ、誰が!!」
「お前以外に誰がいんだよ」
ふわぁ、と欠伸を掻いて近くの柱に寄り掛かるウィリアムに謝罪の色は全くない。事実を素直に口にしただけだと言わんばかりの態度を示している。
少女は殴りたくなる衝動を堪え、己の拳をギュッと強く握り締めた。
深緑の瞳に、澄んだ薄緑色の髪。見てくれは絵になるような美青年だが、残念な事に彼、ウィリアム・スヴァレーは非常に口が悪かった。
世界を破滅へと導いた能力者の中でも、有力な一族の末裔。その身に秘めている能力は、人間の技術力を持っても計り知れない程に巨大だという。
少女は数ヵ月前からそんなウィリアムの世話役をやっているが、顔を合わせる度にこのような暴言を吐かれるのだ。腹が立ってしょうがない。
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