百年の鎖

4/16
前へ
/30ページ
次へ
こんなに生意気で恩知らずの能力者を生かしておく事自体、間違ってるのではないか。長年積み重ねてきた思いを少女は苦情と共に吐露しそうになる。 能力者は敵。野蛮な一族で関わりを必要以上に持つべきではない。人間社会に足を踏み入れる能力者は始末するべきだ―― そういう教育を受けてきただけに、少女の思いは何ら可笑しいものではなかった。 だが、それが実行に移される事はない。ウィリアムは帝都が、いや国を上げて、管理し幽閉しているのだから。 その理由を少女は知らない。ただ、国の為に能力者を幽閉しているのだとしか聞かされていなかった。 「……命令がなければ、絶対コイツをぶん殴って海に沈めてるわ。能力者じゃなければ……!」 様々な思いが胸中を巡るが、少女の今一番の願いは目の前のウィリアムの生意気な口を閉じる事だった。 どす黒いオーラを纏い自分を睨み付ける少女に、笑みを溢すとウィリアムは少女との距離を詰める。 「で? 夕刻でもねぇのにわざわざ何の用だ? 単に様子見に来たって訳じゃねぇんだろ?」 「それは――、っ!」 唇が触れそうな程に顔を寄せてきたウィリアムに、少女は思わず身を引いた。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加