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「意外な反応をするんだね、襟子さん」
「…なによ。あんた私をなんだと思ってるのよ?これでもオンナノコなのよ?」
「そういえばそうだったね」
「嫌なやつ……」
襟子さんは転がっていた枕を拾い上げて、僕の頭に投げつけた。
「羽毛の枕だから痛くないよ。
そのうち襟子さんにも僕を好きになってもらって、お金を払わなくてもコイビトでいてもらうからね」
「……ふん」
「別にお金が惜しいって訳じゃないんだよ。パパの汚いお金だし。
でも、ここにいる襟子さんの目的が僕じゃなくてお金だっていう事実が悲しいんだ」
「私だってお金なんてどうでもいいのよ」
「え?本当?」
僕は思わず言いつけをやぶって顔をあげてしまった。
けれど、襟子さんは咎めたりしなかった。
「そんな嬉しそうな顔しないでよ」
襟子さんは紺色のハイソックスを脱ぎ捨てた脚を上げ、つま先で僕の喉をゆっくりと撫でた。
「あんた、ほんとお父さんにそっくりよね…」
「そうかな?どちらかというと母親似って言われるんだけど」
「そんなことないわ。全然似てない。お父さんそっくり…」
上から注がれる視線と喉がくすぐったくて、僕は誤魔化す為に襟子さんの華奢な足首を掴んだ。
「お父さんには、似たくないんだ」
衝動的に、僕は彼女の足の甲に接吻をした。
「だいすきよ、睛……」
□
家の外で、パパの車が車庫に入る音がした。
衣擦れの音が、激しくなる。
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