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その時だ。
部室の扉が、遠慮がちに二度ほど叩かれた。
五人は不思議そうに顔を見合わせるが、誰も来客に心当たりはないようだ。
どうぞ、と一人が言うと、これまた遠慮がちに扉が開かれた。
その来訪者の姿を見るや否や、五人が息を飲むおぞましい音が部室に響いた。
『あの、入部希望なのですが』
まだ声変わりもしきっていないような透き通った声でそう言ったその少年は、女子と見紛うばかりの美しい顔をしていた。
陶器のような白い肌に、薄茶色の猫っ毛。
少し青みがかった瞳の色は遠く雪国の銀世界を想わせた。
ぶかぶかの学ランに華奢な身体を居心地悪そうに包み込んだ様子は艶っぽく、その場にたまたま居合わせた顧問でさえ、うっとりと見とれていた。
部員たちはすぐさま少年を招き入れ、あれやこれやともてはやして歓迎した。
少年は恥ずかしそうに肩をすぼめ、はにかみながら自己紹介をした。
少年は四分の一ほど異国の血が混じった混血児らしく、幼いころからそのせいでどこに行っても不遇であったという。
五人の部員たちは気の毒に思い、慰めの言葉を添えて温かく迎え入れた。
結局新入部員はその少年ただひとりきりだったが、五人は大満足だった。
少年の描く絵は、少年以上に美しかった。
友人のいない彼はいつも一人で絵を描いていたので、自然に巧くなったのだという。
そんな自虐的な謙遜もまた、好感を持てた。
五人は少年を可愛がり、少年もまた五人の先輩に敬愛を抱いた。
六人は高め合い、友情を育んだ。
だが、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。
少年が用事で部活を休んだある日、五人は誰からともなく告白を始めた。
その告白の内容は、勿論、少年についてのことだった。
いつからだろうか、五人が少年を見る眼が変ってきていた。
それは、先輩が後輩へ送るような、力強く優しく、かつ厳しい教えの眼差しなどではなく、ねっとりとした劣情と、欲と唾液にまみれた恋慕の視線であった。
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