四章 ―キシなんて嫌だ―

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『お前 人間の飼い猫に成り下がったんか』 語気を強める三色の目には はっきりとした怒りと侮蔑の色が浮かんでいる 『・・・』 三色の怒りが分からなくもないから 俺には言葉を返すことはしない 『人間なんかなぁ! 最低な奴らばっかりやねん! 人間なんかと馴れ合いやがって…』 その言葉を聞いたとき 俺の中で何かが切れる音が聞こえた 『…けんな…』 『あ"っ?』 『ふざけんな!! あいつらは… 新選組の奴らはいい奴らだ!! 人間にだっていい奴はいるんだ!!』 沖田は鬼畜野郎だけどなんだかんだ言って俺を気にかけてくれる 斎藤は救世主で俺のメシを準備してくれる 近藤は救い主ですごく優しい 土方、山南、平助、左之、新八、平隊士達 みんな遊んでくれる みんなみんな すっげぇいい奴なんだ!!!! 『これやから 人間に感化された猫はイヤやねん はよどっか行け お前の顔なんざ見とうない』 ガキの頃から長い時間を一緒に過ごしてきた三色 頑なに人間を受け入れようとしない三色の心の内が俺には分かる 『お前も本当は解ってんだろ? いい人間だっているってこと そろそろ素直になれよ…』 俺はそう言うと壬生寺を後にした 『ハッ 灰色にはお見通しやねんな… 素直になれるあいつが羨ましいわ…』 自嘲の笑みをこぼす三色を残して
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