四章 ―キシなんて嫌だ―

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『さぁて これからどうするかな この首輪したまんまじゃ野良に戻ることもできねぇしな…』 そんなことを考えながら賑わいを見せる京の大通りを歩く 『生まれ育った京から出るのは絶対イヤだし… 誰か 俺を拾ってくれそうな奴いねぇかな… って… いた!!!』 俺の視線の先にはいつか出会った派手な三味線男 俺は人混みで見失ってしまわないように目で追いながら 男のもとへ走り寄った 『なぁ!! 俺を拾ってくれよ!!』 男の足元で俺は開口一番にそう頼んだ まぁ 猫語が分かる人間なんかほとんどいないのだが 足元の俺に気付いた派手男は俺を抱き上げる 「誰かと思えば いつかのにゃんこじゃねぇか どうした? 俺に会いたくなったか?」 違うけど 取りあえず拾ってもらうために ニャー と鳴いて派手男の胸板に顔をすりよせた 「ハハッ たっくお前は可愛いなぁ よし! 俺んとこ来い!」 そう言って俺を抱いたまま歩き出した派手男の腕の中で 俺は小さくガッツポーズを決めていた
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