四章 ―キシなんて嫌だ―

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「で? 何それ?」 「何って 猫に決まってんじゃねぇか 牛にでも見えたか?」 派手男に連れられて俺は京の一角にひっそりと佇む旅籠へと来ていた その一室にいたのは派手男の仲間と思しき男 男は俺を抱いている派手男を見て呆れたような視線をよこした 「ハァー 牛は晋作でしょ 僕は何で猫なんか連れてきたのか聞きたいんだけど」 「俺が牛って呼ばれてたのは昔の話じゃねぇか 今はちゃんと論理的に考えて行動してるっつの」 「じゃあ 何で猫なんか連れてきたのか説明してよ 論理的に」 終わり無きくだらない言い争い 二人の話をよくよく聞いていると こういう事らしい 派手男の名は 高杉晋作 晋作は昔 その行動の無鉄砲さから師匠に“離れ牛”とあだ名を付けられた その師匠ってのは初めて会ったときに晋作が歌ってた あの辞世の句を詠んだ人 それから 晋作の仲間の男は 吉田稔麿 二人とも長州とかいうところの出身で よく分かんねぇけど新選組の敵らしい あと 分かったことがもう一つ この二人… 新選組の奴らに負けず劣らず かなり面白い
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