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「はっ? 協力ってどう言う事?」
あたしは、幸也を押し退けて前に出た。
「ごめん、める…めるの事だから、ここに来るのを迷うと思って、事前にめるの背中を押してくれるようにご両親に頼んでおいたの」
美紀が上目遣いに話す。
父が言った。
「いやいや、わたし達も苦労したよ。だが母さんの言葉が、めるを奮い立たせたな」
「そんな、貴方が、いたからですわ」
恥ずかしそうに首を横に振る母。
「でも、めるのおかげで、思いきってこのホテルにも顔を出せたし、感謝するのは、こっちだよ』
父が懐かしそうにゲレンデを眺めた。
にこやかに見ていた支配人が声をかける。
「あの頃、貴方は、大回転の素晴らしい選手でした」
「ええ。私は、そんな貴方に、このゲレンデで一目惚れをしたの」
母もゲレンデに目を向けた。
「えっ、まさか支配人が言ってた話って?」
みんなが、一斉に目を見開く。
あたしは、一呼吸置いてから
「そうよ、あの話は 父と母の話なの」
と、ぼそりと答えた。
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