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「なあ、葵。 最近の電子辞書ってすごいんだな。ノートなんてもんがあんぞ」 俺の部屋で楽しそうに騒ぎながら、昨日俺が親に買ってもらった電子辞書を構って、俺の恋人――和馬は一人で騒ぐ。 そんな和馬を見て、愛しさが溢れ出すと共に、寂しさも溢れ出してくる。 和馬とは付き合って半年経つが、恋人らしい行動をしたことがなかったし、和馬に好き、と言われた事がなかった。 元はノンケの彼だし、もしかしたら面白半分で俺の告白にOKをしたのかな、って最近は思うようになった。 「俺、帰るわ」 唐突に、和馬が立ちあがって、部屋から出て行く。 こんなことは一度もなかったので、そろそろ俺達も終わりなのかな、なんて事を思う。 俺はため息をつくと、和馬がいじっていた電子辞書を開いた。 すると、ノート画面が出てきて、和馬がそこに書いた文字が見えて、俺の顔は一瞬にして真っ赤になる。 ノート画面に書いてあった言葉。 それは、好き、の二文字。
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