24人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「なあ、葵。
最近の電子辞書ってすごいんだな。ノートなんてもんがあんぞ」
俺の部屋で楽しそうに騒ぎながら、昨日俺が親に買ってもらった電子辞書を構って、俺の恋人――和馬は一人で騒ぐ。
そんな和馬を見て、愛しさが溢れ出すと共に、寂しさも溢れ出してくる。
和馬とは付き合って半年経つが、恋人らしい行動をしたことがなかったし、和馬に好き、と言われた事がなかった。
元はノンケの彼だし、もしかしたら面白半分で俺の告白にOKをしたのかな、って最近は思うようになった。
「俺、帰るわ」
唐突に、和馬が立ちあがって、部屋から出て行く。
こんなことは一度もなかったので、そろそろ俺達も終わりなのかな、なんて事を思う。
俺はため息をつくと、和馬がいじっていた電子辞書を開いた。
すると、ノート画面が出てきて、和馬がそこに書いた文字が見えて、俺の顔は一瞬にして真っ赤になる。
ノート画面に書いてあった言葉。
それは、好き、の二文字。
最初のコメントを投稿しよう!