未だ咲かず、いつか咲く

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 ラブレター。  下駄箱を空けたら可愛らしいシールで閉じられた封筒がぽろっと落ちてくる。中身を見ればこれまた可愛らしいこじんまりとした字でこう書かれてあるんだ。『放課後に教室で待ってます。』ってな。  もちろん差出人は不明。その方がドキドキすんだろ。  そんで教室に行ってみれば、自分が好意を寄せていた相手が独りで待ち構えているのさ。待ち構えると言うには、しおらしい様相だとは思うがね。  丁度いい感じに夕陽が差し込んで、丁度いい感じってのがどんなもんかは各自で想像してくれ、俺はそうだなぁ、差出人の女の子の顔が丁度いい感じに引き立つくらいの眩しさがいい。  今の丁度いい感じってのも各自でご勝手にご想像いただきたい。  そしてその後、普段は至極普通に、何の変哲もない女友達として自分に接してくるその子が珍しくも顔を朱に染めて言い放つのさ。「あなたのことが好きでした。付き合ってください」って。  言われる側のことを果たしてその子が『あなた』なんて呼ぶのか、はたまた『君』とかそれ以外にわけのわからんあだ名で呼ぶのかは俺の知った範疇じゃない。  重要なのは自分の呼ばれ方なんかではなく、相手の子が可愛いかどうか! というわけでも決してなく、このシチュエーション自体に価値がある。  いや確かに、驚くほどにブッサイクで好きでもない子に綺麗なラブレターを送られたとしたらそれはどうかと考えちまうかもしれない。  俺だって一般男子だ。さらに言えば純真無垢で正直な一般男子だ。  女の子の顔と胸は無意識のうちに評価してしまうさ。だがあえて言おう。それは正当で合理的な行動だと思わないか?  どうせ女子どもだって俺の顔を見てあざ笑っているに違いないのさ。  クラスに一人くらいはいるイケメンっぽい男子と同じ空間で息を吸い談笑している俺を見て、ツバを吐き掛けたい衝動を必死に抑え込んでいるんだろ? イケメンじゃなくて悪かったな!?  おっと、話が逸れちまった。路線を元に戻そう。
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