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「な、なんで笑ってるダ!」
仲間が一瞬で炎に包まれたことへの動揺は彼らの行動を鈍くした。
少年の手の平が己へと向けられていることを悟る。
「く、来るダ!」
少年に背を向け、逃れようと走り出す。
「《ラハト……」
テオが炎の剣を放とうとしたその刹那、散々待ちわびた猫妖精の頼もしい声が空より響く。
「来たれ《炎鎚》!」
翼を生やし中空に佇む猫はその体躯に見合わないほどの大きな鎚を呼び出す。
鎚の平らな面に描かれているのは反転魔法陣。煌めきを放つ鎚を振りかぶった姿勢のまま、逃げるゴブリンへと急降下。枝を裂き、葉を破いて猫妖精は森へと墜落する。
「なッ!? ハギャ!!」
空を見上げたゴブリンへ加速をつけたままの一閃を浴びせる。
衝撃をまともに受け、転げるように跳ね飛んだゴブリンの体は木の幹へとたたき付けられた。
シャロンはテオのそばに降り立つ。その手に鎚は既にない。
ゆっくりと体をもたげるゴブリンは大したダメージを負ってはいないようだ。その目は妖しく光り、顔は怒りの形相である。
そのゴブリンの体には鎚から転写された魔法陣がくっきりと煌めいている。
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