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「ふん、あい変わらずしぶといな。《縛炎》!」
猫妖精から発せられた言葉に魔法陣は呼応する。
こちらに向かい猛進するゴブリン。
魔法陣からは赤い光が洩れ、炎の輪がゴブリンを囲むように形成される。対象そのものへ魔法陣を描き、ゼロ距離で発動される逃れられない炎の輪。
纏わり付くように収束した炎はゴブリンを締め上げ、拘束する。炎はとぐろを巻いて、爆発とともに上空へ吹き上がる。
立ちのぼる火柱が消えると、そこからゴブリンの姿だけが忽然と消える。
残るゴブリンは既に姿を消してしまっていた。
森に静けさが戻る。
「シャ、ロン……。遅い……よ」
朦朧とする意識の中でテオは声を搾り出す。
「テオっ! テオ! 大丈夫か!? 魔法は使うなとあれ程言ったではないか!」
猫妖精の背からは翼が消える。テオに寄り添うと、そのエメラルドグリーンの毛並みは血に濡れた。
「そう、だっ……た」
テオの体からは力が抜け、地に伏せる。少年はそのまま意識を失った。
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