ミス・フローレンス

12/21
前へ
/25ページ
次へ
  「ふん、あい変わらずしぶといな。《縛炎》!」  猫妖精から発せられた言葉に魔法陣は呼応する。  こちらに向かい猛進するゴブリン。  魔法陣からは赤い光が洩れ、炎の輪がゴブリンを囲むように形成される。対象そのものへ魔法陣を描き、ゼロ距離で発動される逃れられない炎の輪。  纏わり付くように収束した炎はゴブリンを締め上げ、拘束する。炎はとぐろを巻いて、爆発とともに上空へ吹き上がる。  立ちのぼる火柱が消えると、そこからゴブリンの姿だけが忽然と消える。  残るゴブリンは既に姿を消してしまっていた。  森に静けさが戻る。 「シャ、ロン……。遅い……よ」  朦朧とする意識の中でテオは声を搾り出す。 「テオっ! テオ! 大丈夫か!? 魔法は使うなとあれ程言ったではないか!」  猫妖精の背からは翼が消える。テオに寄り添うと、そのエメラルドグリーンの毛並みは血に濡れた。 「そう、だっ……た」  テオの体からは力が抜け、地に伏せる。少年はそのまま意識を失った。    
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加