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暗い森に差し込む月光のスポットライト。青みがかった淡い光が広大な森の中にすっぽりと開けた空間を照らす。
幾千年の時を体に刻んできた大樹がいつしかその命を枯らし風雨に晒され、ついに倒れてしまう。それまで大樹の陰で細々と生きていた草花たちはついに日の目を見ることを許される。
倒れた命は朽ち、土に還る。それを糧とし新たな命が芽吹く。
ここは命の輪廻の象徴たる空間。信仰の対象とされることもある神聖な空間である。
シャロンに導かれ、ようやく辿り着いたその場所はテオの捜し求めていた光に満ちた場所だった。
「ミス……、フローレンス……?」
月に照らされた純白の花は光を帯びて燐光を放つ。眼前に広がる花々はさながら白い絨毯。
テオはたまらず駆け寄り、しゃがみ込む。両手を添えて掬うように丁寧に花を包み込んだ。
「八重の花びら、青みがかった白い雌しべ……、葉の形は丸くて、縁は鋸のようにギザギザ……」
何度も何度も確認した。おじいさんから教わった特徴は完全に一致した。
「ミス・フローレンスだ! 間違いなくミス・フローレンスだよ! やったよ、シャロン! 僕は見つけたんだ!」
頭の上に居座っていたシャロンもいつの間にか花畑の中に飛び込んで、跳ねている。
「テオ、よくやった。これで、じいさんは助かる!」
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