2人が本棚に入れています
本棚に追加
「ア、人間が逃げたダ!」
「んにゃ、エルフが逃げたダ!」
「イイから早く追うダ!」
テオは闇に閉ざされた森の中へと一気に駆け込んだ。追って来るゴブリンは三体。
異形のシルエットは幅の広い剣を抜き、あとを追って来る。金属の擦れる高い音が妙に森に響く。
暗闇を走る。
視界などないに等しい。根に躓き、枝葉は顔に打ち付け、頬を切る。もつれた勢いで転倒しそうになるのを堪えて走る。
それでもなんとか走れるのはエルフの血筋が成す業か。純血のエルフは森に流れを感じ、視覚に頼らず森を進むと言われている。
「ナンだあのガキ! まるでエルフみたいに走るダ」
「感心してる場合じゃないダ! この森はオレラ様の森ダ。人間が逃げ切れるワケないダ!」
「もお、ドッチでもイイダ!お前ら、回り込んで捕まえルダ!」
「「ウィ!」」
二つの影は脇にそれ、森の闇に消え失せる。
「ハァ、ハァ、くそぉ! シャ、ロン!」
朝、村を出てから日が暮れるまで森を歩き通し、そして疾走する。テオの体力も限界だった。
最初のコメントを投稿しよう!