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「ハァ、ハッ、アガッ!」
何かに体を打ち付け、その衝撃に肺から空気が押し出される。勢いがそのまま跳ね返り、地面に体を擦りつけるように転倒してしまった。
「イテテ、クソッ!」
幸いにも下草がクッションとなり頭部を打つことはなかった。
慌てて上半身を起こすも既に追いついたゴブリンが剣をこちらに向けて立ちはだかる。
「ついに追いついたダ」
背後は太い幹の大木。
「すばしっこい人間ダ。ん、エルフだったダ?」
「観念するダナ」
左右から残りの二体のゴブリンが追いつく。三方をかこまれる形で包囲されてしまった。
ゴブリンを間近に見る。暗がりに浮かぶ姿。人型ではあるが肌の色は暗く、顔から太い鼻が垂れる。身につけている剣や鎧はすべて人間から奪ったものであろう。
「シャロン……」
シャロンはどこに行ってしまったのか。助けを求めたのにいまだにやって来ない。
「抵抗したら命はナイダ。お前はオレラ様の役に立つダ。だから悲しむナ」
剣を向けた正面のゴブリンから発せられた最後通告。彼の言葉を合図に左右のゴブリンはにじり寄る。
彼らの言うオレラ様をテオは知らない。知らないが彼らはテオを生け捕りにしたいようだった。
正面のゴブリンをきつく睨みつける。これが牽制になるとは到底考えない。しかしテオには打つ手が浮かばない。
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