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入学式が終わり全ての生徒がバラバラと自分たちの教室へと足を向けた。
その中から俺はサトシを見つけて話しかけた。
「サトシ、校長先生の話とか聞いてたか?」
「ああ、寝てたわ」
「お前、余裕だな」
「まあな」
余裕な奴はいいよな。俺なんていますぐにでもこの学校から抜け出したいと思っているのに。
行きたくないのに足が勝手に進んでしまう。
いつしか、俺達は自分たちの新たな教室の前に立っていた。
「……着いちまったな」
ボソリとそう呟く。どうしてだろう。入学式で晴れやかなはずの日なのに俺の心は全然晴れやかなじゃない。
「うおぇぇえ!」
「おい、大丈夫か、サトシ?!」
「急に目眩と腹痛が……」
そうか、やはりお前も俺と一緒か。
「しっかりしろ!こんなところ吐いちまったら読者様に失礼だ。それに……」
「それに?」
「俺もお前と一緒さ。一緒に乗り越えようぜ、相棒」
そう言って俺は手を差し延べる。
その対応にサトシは口元を袖で拭き、俺に手を重ねた。
「そうだな。試練を乗り越えるとするか、相棒」
手を引き上げサトシを立たせる。
「行くぜ」
「おう」
そして俺達は鉛のように重く感じるアルミ成の扉を開け前に進んだ。
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