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『“不完全”こそ美しい』そう言ったのは僕達を作った“ご主人様”であり、その他の何者でも無かった。今日は十五夜、“完全”な日。僕は“不完全”な体を引きずりながら“ご主人様”の元を去った。“完全”になるために。ただ、それだけの為に。
なぜ、僕が“不完全”かというと、体を十五のパーツに分けてみる、十五揃えば“完全”だ。頭、目、耳、口、鼻、腕、腕、足、足、胴体、心臓、肺、胃、腸、性器。この十五の分け方はその人形によって異なるらしい。しかし、僕の分かれ方はそうである…らしい。断言できないのは、“ご主人様”が一度僕を作ったときに言っていたのを聞いただけだからだ。話が脱線した。と言う訳で、僕はその十五のパーツの中の腕が一つ欠けているのだ。
そもそも、だ。なぜ人形である僕がこうやって意志を持っていて、歩けるのか、それは“ご主人様”が特別な人形技師であるからだ。でも、その“ご主人様”は狂っていた。“不完全”を愛して、人形を作った。“ご主人様”が“不完全”を好きな理由を一度だけ聞いたことがある。
「“完全”はそれ以上がない。不完全はそれ以上がある。その、欠けた部分を得ようとしてもがくモノは酷く美しい。だから、G-36お前もその欠けた腕を得ようともがきなさい。それが私への最大の親孝行だ。腕を得たとき、お前は“完全”な人形になる。期限は一年。それを過ぎても“完全”に慣れていなかったらお前はただのガラクタになる。逆に得れれば、人間に慣れる。もがきなさい、そして、苦しみなさい。狂気の中で…」
酷く楽しそうで、嬉しそうな目をして“ご主人様”は言った。だから、僕は欠けたものを得るためにこうして山里はなれた屋敷から日本の首都、東京までやってきたのだ。
欠けたものをどうやって得るのか、それだけは“ご主人様”は教えてはくれなかった。しかし、“ご主人様”が作った“不完全”な人形はこぞって東京へ行く。きっと、東京へ行けば分かると言うことなのだろう。
人間になりたい。僕はそう心の中で呟き普通の人間よりもさらりとした色素の薄い髪の毛を掻きあげた。
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