2:男の秘密と隠し事

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 それはごく一般的な昼下がりだった。  サラリーマン達が昼食を食べる場所をいそいそと確保する。どのお店も 満席、満席、満席――  近くには専門学校があるらしく、学生たちがコンビニに群がる。  ――ああ、やりにくい。  だから都会はイヤなんだと、ケンジは口には出さず悪態をついた。  不機嫌そうな顔だちは元々だが、人の多さに苛立ち 更に怪訝な顔になっていく。  三時間前からカフェのガラスよりの4人テーブルに腰を下ろしていたケンジは 店員と何度も目が合っていた。 「もう良いから、泣くなって。」  目の前でボロボロと涙を流すまゆみに、先程まで覚えていた怒りがどこへ行ってしまったのか、ガラスの向こうに探していた。 「…ごめんね?」 「ああ、もう良いから。」  まゆみは泣いてる姿が一番かわいかった。  笑ってる時もベッドの上でも、すねている時も、それなりにかわいいけれど。  こいつを手放したくない。  そばに置いておきたい。  そうケンジが心底思うのは泣いてる姿だった。 「…多分もうすぐ、祐介が来るかも。」 「また、電話したのね。」  ふふっと笑い、黒く長い艶やかな髪を耳にかけるまゆみに、ケンジはドキッとした。 付き合って7年――この女に何度惚れれば気がすむだろう。  
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