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「えっ、どうして私達の事......まだ名乗ってもいないのに」
と、楓。
その疑惑は当然であり、誰もが同じ意見。
だが、沙希は敢えて挑発するような口調と素振りで、
「同じ学園に通う二人は少なからず面識はあるようだけど、改めて対峙してみれば──」
ニヤリと、冷笑を称え。
「──大したこともないわね。他のメンツもそれと同等......いえ、それ以下ね。現にそこに倒れる男共も手応えが無かったし」
それに、
「この調子なら、この場全員を叩き伏して慎を奪還するのは簡単だわ」
尚も、沙希は煽るように言葉を吐き出す。
「だって、慎の全ては私のもので、私の全ても慎のものだもの──行く末は幸せな家庭を築いて、子供もいて......あぁ、想像するだけでもう」
飛躍(ひやく)に飛躍を重ね、彼女は身を抱いて恍惚に顔を変える。
一瞬だけ、そのばの時間が凍結する。
妄言を吐く、可笑しな女と思われているか、それとも確固たる自信を持って、悠然と言い放つ女だと思われているのか──判断は分からない。
だが、会話の切れ目もなく彼女の口は言葉を吐き続ける。
「子供の名前は何がいいかしら?男の子だったら慎の名前を含めた『慎吾』(しんご)とか。あぁ、でも、女の子だったら私の名前から付けて『亜李沙』(ありさ)とか──」
理想の未来像を隠すことなく沙希は頬を染めながら続ける。
全員が、唖然とその光景を眺める中、二人だけがその言葉を是としない。
そう、三角の内の二点────漆と楓だけが、唯一。
「慎くんとの子供は私が最初なんだもん!他の誰にも譲る気はないわ!」
漆が叫び、第二波。
「そんなのは絶対に許さないよ!私の初体験も、初めての子作りも、夫婦の営みも全部シンくんのものだし、シンくんに捧げるんだから!」
周知の反応もお構いなしに二人は卑猥な言葉を言い放っていた。
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