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「っ、どうして私の能力をそこまで詳しく......」
警戒心をより一層強めた楓が、構えながら言う。
けれど、沙希は。
「さあね?どうしてでしょう?」
嘲るように笑い、真偽を有耶無耶にしていた。
「......」
鋭く尖っていた敵意が、さらに研ぎ澄まされる。
彼女を包む雰囲気がより重く、おぞましく変化して、最早誰にもそれを制止させることなど出来ない。
そして、
「──【瞬歩】」
姿が、消えた。
音もなく、その場に風だけを残して。
「────!?」
流石の沙希も、彼女の本領発揮に顔をひきつらせていた。
気配を辿れず、カウンターを狙うことも出来ない。
唯一、取れる選択といえば────。
「防御......しかないわね」
腕を十字に交差させ、完全防御体勢に切り替える。
機会(チャンス)があるとするならば、攻撃が当たる寸前。
肉を切らせて骨を絶つ。
後の一手としての有効な戦略ともいえよう。
刹那、場が動いた。
「────!」
ズキリと、正面からの衝撃が腕を伝い、全身に痛みを刻む。
砲丸でも直撃したかに等しい威力の攻撃が沙希を襲っていた。
「(っ、今────!)」
だが、同時にチャンスでもある。
一瞬だけ姿を現した楓の腕を掴み、投げ技に持ち込めれば、
「これで......っ」
そう、確信していた。
「──遅い」
楓の声が前方でなく、後方から聞こえていなければ。
「!?」
ギョッと、目を見開くが──時既に遅し。
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