6563人が本棚に入れています
本棚に追加
まさに、青天の霹靂。
なんの取り留めもない、水属性の分身である筈なのに、だ。
「有り得ないです!」
開口一番、最初に叫んだのは意外にもアリアス。
後ろで結った金髪を大きく左右に揺らし、首を振って否定していた。
その碧眼に映る光景は──困惑と疑惑。
全員が驚愕している理由を、彼女ははっきりと口に出す。
「どうして......っ、如月 沙希とは以前も一戦を交えましたが、その時は────!」
大きく、溜めて。
「────水属性なんか使ってなかった!」
それは魔法の法則を覆す事態。
五大属性を宿す人の身の大原則──人体に有する属性は『一つ』のみ。
誰もが同時に一般常識を再確認していた最中、
『──戦闘中に余所見とは余裕ね』
声が、響いた。
頭に直接伝わるような、奇妙な感覚。
ハッと、全員が表情を変える。
視線の先──水溜まりに向けて。
『あーあ、最後まで隠し通すつもりだったのに......少し油断しちゃったわね』
けど、と続け。
『ま、お披露目って事で納得しましょうか』
ズブリと、水面から腕が生えた。
いや、“水が腕の形になった”と表現した方が適切だろうか。
次第にそれは固定し、肌色に染まって完全な右腕となる。
『あははっ』
そこからは瞬く間だった。
這い上がるようにして水面から腕が伸び、身体全体が色付きながら形成されていく。
時間にして、約十秒弱。
「さあ、始めましょうか」
怖気が起こるほど凍える瞳を称えた沙希が、慎を除く全員を見据えていた。
最初のコメントを投稿しよう!