episode5【告白・酷薄】

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「如月......沙希っ、貴女!」 「──違うわね」  アリアスが言い終える前に、沙希がそれを遮り、言葉を挟む。 「私は蛟(みずち)。水を司る神竜の化身であり、御蛟の一族でもある」 ──────ピュッと。  彼女が腕を水平に振るう。  それだけで、腕に纏っていた水が鋭利な刃物となり、あらゆる物を切断する刃となる。  それは全員の頭上を通過して、 『────!』  壁が横一線に刻まれるのを合図に、沈黙は破られた。 「【Manifestation】(顕現)!」  先陣は、アリアス。  唱え、右手の【収現の指輪】から 武器を取り出す。  粒子が武器を模し、次第にそれは長槍の形を司る。  抜き放つように。彼女はそれを左手で握り、投擲の構えを取って──その武器の名を言い放つ。  同時に、沙希へとその矛先を向けて。 「【グングニール】!」  神話の中で語り継がれる伝説の槍。オーディンが所有したとされるその槍は、目標を貫いて元の持ち主へと返ってきたとの伝説がある。  アリアスはそれを迷いなく投擲していた。  空気を裂き、全てを貫く必殺の槍はどんな防御も突き破る。  高速で放たれたそれは、あらゆる物を穿つ。  対し、彼女は、 「ふふっ」  その場から動こうとせず、ただ冷笑を称えるのみ。  刹那、槍が彼女の腹部目掛けて接触し────。 「......!」 ───一切の抵抗なく、グングニールは沙希の身体を突き穿った。    
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