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自殺行為としか思えぬ行動。
悲惨な光景に目を逸らしたくなる。
少女の細い腰に槍が突き破っているなどと。
『っ!?』
戦慄、した。
あろう事か、勢いの止まらぬまま沙希の身体ごと槍は壁に突き刺さる。
直後、槍を中心に壁に亀裂が走り、威力の壮大さが際立つ。
ガクリと、彼女の頭が俯いて、四肢が力無く垂れ下がった瞬間。
「沙希!」
慎が形振り構わず駆け出す。
冷静さを欠き、必死に。
「馬鹿な......避けもしないなんて、正気の沙汰じゃないです!」
そして、誰よりも驚愕を露わにしていたのは他でもないアリアス自身。
無抵抗の相手に刃を向けるのは主義に反する行為だと常日頃から思っていた。
頭に血が上って、一度その主義を破ってしまったこともある。
学園での慎と対峙した時だ。
あれは自分の過失。目的の遂行に立ち塞がる障害に対して、我を失っていたとしか考えられない。
「(私は......また)」
────間違えた。
握る拳に力を込める。
後悔先に立たず、起こってしまった事の巻き戻しは出来ない。
「っ、この!」
「!?」
悔悟していた最中、呆然としていたアリアスの耳に慎の声が響く。
ハッと、振り返った時には既に、
「邪魔......だ!」
沙希の腹部に刺さっていたグングニールを引き抜き、無造作に放り投げていた。
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