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ガゴッ、と。
アリアスのすぐ側面にそれは突き刺さり、床にめり込む。
「うっ......」
突然、頬に飛び散る液体状の何か。
反射的に目を閉じてしまうが、即座に違和感を肌で感じていた。
指でそれを拭い、確認すると、
「また......水?」
何度、この状況を目の当たりにしたのだろうか。異変を察知する度(たび)、水が関係している。
「そんなに心配しないで。私は大丈夫だから」
「沙希......!」
そして、何事もなく立ち上がる彼女がいて、
「なんなら確認してみる?ほら、触ってみてよ......私のお腹」
慎の手を誘導して、臍の辺りを指でなぞらせる。
「ん......っ」
ビクッと、頬を染めて艶めかしい声を漏らす。
慎も、目を剥いていた。
「傷が......無い」
確かに、槍は彼女の腹部を貫いていた。この目で確認もした。
なのに、だ。
「沙希、一体これは────」
何の能力だ、と。
疑わずにはいられない。さっき、彼女は『蛟』(みずち)と言った。
御蛟とも、同時に。
十二人の【御】の名を刻む一族の序列二位──。
「同化能力──御蛟 沙希が有する希少魔法よ。物理攻撃無効化、物質変異、属性同化......」
そして、と。彼女は続け、
「炎と水と同化──私に弱点は無い」
同時に唱える。
全員を襲う、彼女の魔法が。
「【water・spell】」
次の瞬間には、彼女の頭上に大量の水弾が展開していた。
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