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「......慎」
スッと、両手を慎の頬に添える。
身長差があるため、彼女は爪先立ちをして彼との高さを埋める。
それでも、慎は微動だにしない。
ただ、そこにいるだけ。
「イメージして、身体が水に溶け合い、混じり合う形を」
一息。
「あなたの能力で、私の能力を──」
鼻先まで自分の顔を接近させ、沙希は囁いた。
「【overwrite】(上書き)して」
直後、彼女の柔らかい唇が自分と重なっていた。
異性との接吻は、これで二回目。
一度目は、淫靡なる形でのキス。
楓の欲望のままにした口づけは、搾り尽くされるかのように生気を吸い取られるかのようだった。
そして、二度目。
友達......同門として、家族にも近い存在だった彼女。
その筈なのに、
「ん......む」
「ぅ......ん」
熱く火照った唇は、身体全体に行き渡り、熱を帯びていく。
一度目と違う感触といえば、
「(体に......何か、流れ......っ)」
口を通して流れる“何か”。
その正体はすぐに明白となる。
身体に起こった異変によって。
「ぐっ、あぁ!」
────ドクン。
心臓が、ハンマーで殴られたに等しい衝撃。
右手で胸を押さえるも、一向に激痛が治まる気配はない。
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