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anotherview──Urushi・Midou
「っ!?」
気づいた時には、既に魔法を放っていた。
目の前がドス黒く染まり、銀髪碧眼のみが瞳に映る。
標的だけ、狙ったつもりだった。
なのに、
「慎くん!」
関係のない弟まで殺意の牙を向けてしまったから。
取り返しのつかない過ち。
全力に近い威力で放った魔法は、相手に多大なダメージを与える。
「シン......くん」
破壊された床や壁の残骸や、土煙が視界を覆う中、楓は光景の一部始終を見て呆然としていた。
力無く床に崩れ落ち、瞳だけが煙の先を見つめていた。
「......冗談で済ませられるレベルじゃありませんわね」
と、アリアス。
宿敵の負傷に嘆いているのか、それとも別の感情が揺れているのか。
彼女もまた、立ち尽くす。
「────」
だが、
『!?』
笑い声が、響いた。
慎の声ではない、もっと違う“狂気”に満ちた“何か”
視界を遮る硝煙が晴れ、そこに立つ一人の人物。
それは、
「ははっ、あはははは!やっと、やっと慎と一つになれたわ!」
ただ一人、狂ったように笑い声を発する銀髪碧眼の少女。
如月 沙希改め、御蛟 沙希がそこにはいた。
周りに慎の姿は無く、彼女だけ。
その身は無傷で、目立った負傷痕も疲弊も感じられない。
「やはり、御蛟の【同化】能力ね......まさか、この場所でそれを体験するとは思わなかったけれど」
鈴が、ようやく口を開く。
開口一番ともいえる言葉の最初は、彼女の魔法についての正体。
不可解な現象の全てを解決する一言だった。
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