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「......聞いた、ことがあるよ。御蛟の能力について、ね」
「......礼二」
鈴が名前を呟く。
ここで、先程まで倒れていた礼二が起き上がって口を開いていた。
既に満身創痍。
早々に退場させられた彼であったが、鈴の言った『同化』という単語に反応して覚醒したらしい。
「属性と、同化して......体を物質と同等の組織に変化させ、その性質を限界まで引き上げることが出来る」
一息。
「体は形を成さず、あらゆる形を模すことが可能......だから、物理攻撃の一切は効果がなく、又......魔法攻撃も相性によっては効き目が薄くなる」
そこまでが限界だったようだ。
礼二は俯き、痛む腹部に耐えるべく、必死に意識を集中させる。
つまり、要点を整理すると。
礼二の放った炎弾に対し、彼女は一瞬だけ水と同化して回避。
際に、水分が勢いよく蒸発して周りに広範囲の水蒸気を発生。
虚を突かれた礼二に、対処の時間はなく、沙希の鋭い一撃が彼の不意を突いて炸裂。
そして、先の光景の疑問も解消。
攻撃が直撃する間際、彼女は体を変化させ、雷槍の雨を最低限のダメージで受けた。
「なら......っ」
正体不明の能力も明白となった、彼女の本名も、経緯も、自信も、全て紐解けた。
しかし、
「どうしてっ、慎くんがいないのよ!」
その場に立つのは彼女一人だけ。
慎の姿はおろか、気配までもが完全に消失していた。
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