episode5【告白・酷薄】

25/31
前へ
/481ページ
次へ
「やれやれ──まだ理解してないみたいね」  けれど、沙希はそれを回避しようとすらせず、腕を組んで嘆息するだけ。  そして、楓は構うことなく一閃を放つ。 「──」  本来、打撃ならば響く音は鈍い筈。骨の軋む音と、肉を抉る感触のみ。 「っ!?」  実際は、違った。  眼前で見た光景──それは、とても有り得ない結果。  蹴り放った足が、彼女の頭部を吹き飛ばし、それと同時に飛び散る大量の水。  ぐらりと、頭部を失った沙希の体が後ろに倒れていく。  その筈だが、 『さっき、懇切丁寧に御霊が説明してたわよね?私には物理攻撃の一切は意味が無いって』  瞬時に、後ろ足が体を支え、飛び散った水が欠損箇所に収束していく。  頭に響く音波のような声が聞こえ、瞬(またた)く間に、 「さっきの瞬間に、慎が御蛟の力を発動して、身体が水に変化した。でも、慎は体を維持できなくてそのまま私が取り込ん──」  顔が修復され、沙希が説明の補足 をしている最中、 ────轟、と。  大気をも穿つ雷の一閃が煌めいた。  言葉を遮って投擲された複数の攻撃は、彼女の腹部、脚部、腕部、頭部を塵と化す。  今度は原形すら残さない。 『全く......人の話は最後まで聞きなさいよ、あー、痺れる』  バチッ、と伝統体である水は表面に雷を帯びる。  それでも、 「学習能力が欠落してるの?アナタ達、いい加減に“力の差”を理解しなさい」  水面から這い上がる銀髪碧眼の悪魔。  その瞳の色は、さらに蒼く染まっていた。もはや、『鮮やか』でなく『濁った』色彩。    
/481ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6563人が本棚に入れています
本棚に追加