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「一つ......確認していいかしら?」
ふと、口数の少なかった鈴が沙希に尋ねていた。
機会を見計らったのだろう、今の今まで介入しなかったのはこのためらしい。
「どうぞ“御神楽”先輩」
敢えて“神楽”とは呼ばず、本来の名字で呼ぶ。
彼女の情報もまた、隅々まで知られているようだ。
「結局の所、アナタは『一つになった』と言ったけれど、実際に弟くんはどういった状態なの?」
「露骨に直球を突くわね......ま、いつ聞かれるか待ち遠しかったけどね」
一息、間を置き。
「文字通り、融解した慎を私の身体に吸収したのよ。別に死んでないし、会おうと思えば分離して対面も可能──」
「なら──」
楓がホッと胸をなで下ろし、漆も後ろで少しだけ表情を緩める。
しかし、
「分離するつもりは毛頭無いし、慎は今、私の中で眠ってる。起こさないで欲しいわね」
彼女はあっさりそれを拒否。
同時に、斗真を除く女性陣が再度殺気を飛ばす。
「おぉ、恐い恐い。いくら凄んでもそれだけはイヤよ。だって慎はこれからずっと私が守ってあげるもの──あらゆる障害から、ね」
彼女が、構えた。
『────っ』
今度はアリアスと鈴も混じって、四人で沙希に敵意を剥き出しにする。
いつ、動いても不思議ではない状況で、
「──面白い物を見せましょう」
沙希が、呟いた。
それは突然の提案。殺気が飛び交う中で彼女がじっと沈黙していた。
瞳を閉じ、瞑想。
「──」
そして、
「【trance formation】(変身)」
身体全体を水が覆った。
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