episode5【告白・酷薄】

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 違(たが)うことなどあろう筈もない、雰囲気から口調まで彼自身に間違いなかった。 「やっぱり、あの女の言葉は妄言だったのね!慎くんが吸収されたなんてあるわけないもの!」  満面の笑顔で漆は駆ける。  疑うことなく、弟の温もりを肌で感じるために、ひたすら真っ直ぐ。 「──ははっ」  慎が、今までにないくらいに表情を怪しく歪めなければ、だが。  漆の手が、慎に触れる瞬間。 「【water・spel】」  彼の手刀が、袈裟懸けに振り抜かれた。  鋭利な武器を彷彿とさせる、水で形成された三日月の刃。  それが、至近距離で放たれる。 「────え」  突然の事態に、回避はおろか最低限の防御も不可能。  彼女の身体に、刃が食い込むその刹那────。 「漆ちゃん!」  楓が跳び出していた。  高速で刃と彼女の間に滑り込み、庇うように背中で刃を受ける。  ズブリと、肉を抉る嫌な感触。  それは激痛を彼女の精神に刻み、刃は肌を滑るように通過していく。  水の刃が斜めに通り過ぎ、身体から離れた瞬間、 「あぁ!?」  ビチャ、と。  床や壁に彼女の鮮血が飛び散ったのを、全員が息を呑んで目撃していた。  ついに、血が流れた。  痴情のもつれでなく、正真正銘の──殺し合い、が。
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