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「御崎 楓!アナタ......どうしてっ!?」
漆が慌てて抱きかかえる。
「ごめん、ね......。なんか、勝手に体が動いてたの......」
苦痛に顔を歪めながらも、彼女は空元気で笑う。
それに、と楓が口を漆の耳元に近づけ、囁く。
「──私はこの程度じゃ死なない」
確信を以て、彼女は唱えた。
「【healing・spel】(治癒魔法)」
直後。
蒼白い光が、パックリと開いた背中の傷を舐め取っていく。
それは傷口を撫でていき、断面を綺麗に閉じた。
「でも、失った血は戻らないんだよね......所詮は回復だから」
多少、顔が青白くなってはいるが、彼女はなんとか立ち上がる。
恐らくは、血を流した影響で貧血気味に陥っているのだろう。
が、同時に。
「御堂 慎!」
彼女の一番の親友であるアリアスが激怒していた。
その右手には既に新しい武器。
日本に伝わる、呪われし名刀。
「【村正】」
黒い鞘に刀身を収めた妖刀が、指輪から黒い靄(もや)と共に現れていた。
同時に、禍々しい闇を纏いながら。
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