episode5【告白・酷薄】

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「はぁぁぁあああ!」  怒りに任せてアリアスが刀を振るう。それだけで、刀から黒い靄が形を変えて慎に襲いかかる。  刹那に叫ぶ。 「切り裂け!村正!」  瞬間、黒い斬撃が放たれた。  全てを呑み込む闇の刃。斬られた箇所から浸食され、じわじわとその身を蝕む呪いの一撃。 「......」  慎......と、断言出来るかが不明の男にそれは直撃。 「バカの一つ覚えだな」  が、 「!?」  ゾクリと、背筋が凍る。  なんて冷たい目。温厚な彼の面影は既に跡形もなかった。  そして、案の定。  黒き刃は慎の体をいとも簡単に切り裂き、鮮血の変わりに大量の水を撒き散らしていた。  まるで雲を切るよう。 「また、水と同化ですか......っ」  タッと、アリアスは後ろへ跳び退き、慎から距離を取る。   その間にも、水と化した慎の形状が元の姿に収束していく。 「貴方、弟くんじゃないわね。姿と雰囲気は似てるけど、中身が全然違うもの」  観察眼を発揮し、鈴が鋭い指摘を彼に対して突き刺していた。 『あは、バレちゃったか』  顔半分だけ欠けたまま、慎は口調を変えてそれを肯定。  明らかに、彼の様子は妙だ。  まるで、人格だけが変貌してしまったかのように。 「今の私は慎と『二心同体』という状態よ。慎の意識が眠っている間は、この身体の所有権は私にあるの」 「それも【御蛟】の力かしら?」 「半分正解かな。一時的にも慎が【同化】の能力を有してるからこそ、こんな型破りな変化が可能ってわけ」 「......弟くんの【overwrite】(上書き)を逆手に取ったって訳ね」  クスクス、と沙希は微笑でそれを肯定の是とする。  
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