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その光景は異質なものだった。
四対一という状況で、汗一つ流すことなく一人の男が体技を披露する。
蹴り、殴打、投げ、肘鉄、踵落とし、回し蹴り、手刀、掌打。
あらゆる技を駆使して、多人数をなんなく蹂躙。
誰一人として、彼一人に致命傷を与えることが出来ない。
もう、これは実力が拮抗しているというレベルを越えていた。
「その程度か!」
ゴッ!と、彼の拳が床を打ち砕く。
建物の損傷は既に甚大。
引っ掻き回した傷や、魔法で撃ち抜かれた壁、刀傷に、銃弾の穴、物理的に破壊した支柱。
煌びやかな異彩を放っていた館は無惨にも廃墟と化していた。
その最中、彼女は尚も敵意と牙を向ける。
「はぁ!」
ヒュッと、風切り音。
横凪に振り抜かれた刀は、彼の頭部目掛けて襲いかかる。
「無駄だ!」
だが、彼は避けようともせず、わざとその剣撃を右腕で受け止めた。
何度目かの攻防。
結果は既に見えていた。
「っ、また......」
文字通り“糠に釘”
手応えのない彼の身体に、刀はただ通過するだけ。
水が頬を乱暴に叩き、それが一瞬だが目を閉じてしまう結果になる。
相手は、その隙を見逃さない。
水となって弾けた右腕をそのままに、残る左手で彼女の腹部に掌抵を突き刺す。
「ぐっ、かは......」
衝撃がモロに伝わる。
肺の空気が一気に吐き出され、一時的な呼吸困難に陥った。
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