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「くっ......そ!」
それは唐突だった。
満身創痍な身体に鞭を打ち、震えながらも一歩足を踏み出す。
風を纏い、大地をも切り裂く疾風の刃を右手を斜めに振り抜くことで前方に放つ。
轟、と。
それはあらゆる障害物を裂き、目標に致命的なダメージを与える。
──筈だった。
「──っ!?」
────バギン!
呆気なく、風が爆ぜる。
威力は上々。分類も中級に属する渾身の一撃だった。
残り少ない体力と魔力を絞り出して放った、彼にとっての最後ともいえる攻撃。
なのに、弾かれた。
相手の携える長剣──装飾も何も施されていない無骨な形状の武器に。
複製品(レプリカ)......だろうか。
一見、強度の弱い変哲もない武器に伺えるだろうが、実際は違う。
魔力を付加した物質は硬質化する。
ごく自然の理(ことわり)。
こんな初歩的な知識すら忘れていた、今はそれが腹立たしい。
けれど、後悔に頭を悩ませる時間は許されなかった。
「あはは、頑張れ男の子!休んでる暇はないよ」
「もうっ、抜け駆けはズルいわよ!私が先に相手するんだからね!」
「でも、彼......そろそろ限界じゃない?魔力も枯渇してるみたいだし......立ってるのも辛そう」
「そんな軟弱者じゃないでしょう?彼もそれ相応の覚悟があってこの学園を訪れたのだから容赦は無用よ」
「同感だー、私たちの実力を試す絶好の機会だから......早い者勝ちよ、彼と戦えるのは、ね」
声が、届いた。
同時に複数人、それも女の子の声。
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