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――駆視点――
一般的な一軒家の個室。
夕食を終えふと窓から射すオレンジの柱を視界へ入れると、時間を無意識に脳へ刷り込む威力を与えた。
1人ロールプレイングゲームに熱中していた駆はセーブしてゲームを終わらせ、クローゼットから外出用の服を物色し始める。
「んー……確か美鈴が黒なら失敗しないって言ってたっけ?」
幼なじみの意見を思い出し、シンプルに先月買ったばかりのジーパンと少しサイズが大きい黒のシャツへと着替える。
更に昔洋子に無理矢理連れて行かれたアクセサリーショップで購入した十字架のネックレスを首に下げ、姿鏡でおかしな所がないかササッと確認。
ちなみに洋子が強引に連れて行った理由は「クラスメートがいつまでもダサいと見苦しいだけよ!べ、別に一緒にデートしたか(以下略)」とのことらしい。
「……よし、そろそろ行こう」
机に置いてあったアリサからの誕生日プレゼントである腕時計をはめ、一階で夕食の片付けをしている母へ出掛ける意志を伝えに行く。
父親?誰それ?というか何それ?
「母さん。今からちょっと出掛けて来るから」
「あら?こんな時間に?今日は愛すべき母親と淫らな夜を過ごすって誓い合ったじゃない」
「ミジンコ程もそのような約束した記憶はございませんが!?」
「あらやーね?ほら昨日2人ベッドで愛を囁き合った時よ」
「母さんが勝手に入って来たし『愛』じゃなくて『哀』しか叫んでませんから!!」
一児の母親とは思えない肌の艶と若々しさ。
カチューシャで前髪を上げ、少し低身長にも関わらずスタイルは群を抜いて目を見張るものがある。
20代前半の美人と言っても過言ではないスーパーマザー……それが駆の母親、東雲凛々(しののめ りり)である。
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