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まだまだ目覚める気配のない私は、この突拍子もない夢に付き合う事にした。
「筋肉は素晴らしいのよ、私が初めて理想の筋肉に出会ったのは10歳の時…」
―――初夏、5月の連休GWも終わり日常が怠く感じる季節。遮るもののない陽射しがジリジリと七分袖から覗く真っ白い手首を焦がした。
―嫌だ!恐い!恐い!そっちに行きたくないよっ!
幼い美羽は男に両手を捕まれ引きずられていた、恐怖で声が出ない。目一杯の抵抗で腰を引き、細い両足で地面を踏ん張る。
しかし、体格や力で勝てるはずが無く体を『く』の字に曲げたままズリズリと男の思う方向へ引きずられる。
瞳から涙が溢れ、鼻水も出ていただろう。それでも男から目をはなせない。
男を見る恐怖より男を見ない恐怖の方が勝っているからだ。
『―ねぇ、トイレに行きたいでしょ?行きたいよね?一緒に行こうよ』
男は口もとだけ歪めて笑う。
下校途中、友達とバイバイしたあといつもの道をいつも通り歩いていた。
いつもと違うのは、公園の入口前でこの男に道を聞かれた事だ。
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